ID : 4966
公開日 : 2007年 10月12日
タイトル
天然林の破壊現場を歩く(2)違法伐採の疑惑
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新聞名
JanJan
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元URL.
http://www.news.janjan.jp/area/0710/0710103710/1.php
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元urltop:
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写真:
 
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2日目は、道東の足寄(あしょろ)町西部の伐採現場を巡った。希少動植物の生息地として林野庁が保護林に指定している区域があり、ナキウサギの生息地や風穴も点在するところだ。保護林の近くで風倒木 が発生していたのだが、ナンバーテープとスプレーがつけられており、すでに収穫調査が行われていた。林床はゴゼンタチバナなどの植物に被われている。この風倒木を運び出したら、これらの植物がブルドーザーなど の重機に押しつぶされてしまうのは明白だ。
 保護林指定とは要するに、そこだけを残して周囲は伐るということだ。ほんの一部だけ手をつけないことで、生物多様性の保全ができるとでも思っているのだろうか。

小学校のグラウンド並みの広大な土場
 午後は林道脇に立てられた競売場所を示す立て札を辿って、ヌカナン川の上流へと林道を進んだ。右岸の斜面は風倒木が発生しているが、まだ手はつけられていない。林道の終点近く、峰が迫るあたりに小学校のグ ラウンドほどもあろうかと思える広大な土場が出現した。昨日見た土場よりはるかに広い。すでに競売は終わり、丸太は搬出されている。
 製品販売の場合、伐り出された丸太は全部、土場に積み上げられ、競売にかけられる。土場の面積は、そこから伐り出された木の量を物語っているのだ。これだけの広さの土場に積まれた丸太は、さぞかし圧巻であった ろう。あたりの斜面には作業道で山肌を削った跡が生々しく残されている。
 保安林を伐採する場合は、土場の面積や作業道の長さなどを事前に知事に届け出て承認を得なければならない。この広大な土場は、どう見ても違法としか思えない。そして、競売が終ってしまえば、大半の土場はそ のまま放置されて、多くの場合ササ原と化すのである。ササで被われてしまうと、樹木の種子が落ちても発芽できず、森林の復元は困難になる。たとえ植林をしても、単一樹種による人工林を増やすだけだ。天然林を重 機で切り裂いたうえにスカスカの森林にし、土場という広大な裸地を造成するのが保安林伐採の実態だ。

森の墓場のような風倒木処理跡地
 広大な土場をあとに、別の競売の札を辿っていくと、まだ一部の丸太が残されている土場に出た。その土場に続く現場に踏み込んで、一同は唖然とした。「なんだ、これは!」
 沢沿いのそこに広がっていたのは、風倒被害地から材として使えそうな木だけを引きずり出し、残りの残骸を放置した「森の墓場」ともいえる殺伐とした光景だった。幹が折れた木が亡霊のように突っ立ち、残された倒 木や根株がころがっている。重機でかき回したあとが痛々しい。伐根には販売木であることを示すナンバーテープやスプレーがついていないものがいくつもある。
 直径が90センチ以上あるエゾマツの伐根は、しっかりと根付いていて風倒木とは思えない。伐根の周囲を見回しても、何の印もなく、盗伐が疑われる。こんな大径木がこのあたりの森林から姿を消して久しいが、風倒 木処理の名目で、わずかに残されていた大径木まで伐り出しているのだ。

直径90センチを超えるエゾマツの大径木。収穫調査の印はなく、盗伐が疑われる。
 冬に造材作業を行い、雪の上を滑らせて丸太を運んだり、いかだを組んで川に流していた時代は、林床を大きく傷つけることはなかった。しかし、ブルドーザーで作業道をつくり、ダンプカーで搬出する方法が普及した 現在では、森林を傷つけないような施業の気配りは微塵もない。林野庁の頭にあるのは、コスト削減と赤字補填だけだ。
 ブルドーザーで網の目のように作業道をつくって林床を破壊し、価値のある大径木だけを収奪していく。彼らの目には、樹木は札束としか写らないのだろう。生物多様性の保全や、森林の更新などはお題目だけで、やっ ていることは、その正反対だ。
 十勝東部森林管理署の今年の天然林の伐採量は約5万立米だというが、これは収穫調査を行った表向きの数字である。何の印もない木が多数伐られている実態から推察すると、実際にはもっと多量の木が伐られてい るのではなかろうか。
 国民の目の届かない山の中では、何をやってもバレないと思っているのだろうか。国民の財産を食いつぶし、生物多様性を破壊しているのは、まさに林野庁そのものなのである。