ID : 5464
公開日 : 2007年 11月23日
タイトル
社説:森林環境税導入 持続可能な財産形成を
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新聞名
秋田魁新報
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元URL.
http://www.sakigake.jp/p/editorial/news.jsp?kc=20071121az
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元urltop:
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写真:
 
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使途や税額を県が幾度も見直すなどの紆余(うよ)曲折を経て、森林環境税「水と緑の森づくり税」関連条例が20日成立した。来年6月から、個人は年額800円、法人は年額1600?6万4000円(県民税均等 割額の8%)が県民税に上乗せされて徴収されることになる。
 同税の導入をめぐっては、3年余り前から県議会と県の双方で検討を続けながらも、県民を巻き込む論争にまで発展した子育て教育税の陰に隠れ、入り口論に終始してきた経緯がある。2度の継続審査を経た末、11月 臨時県議会で最大会派の自民党の意向を県が受け入れる形で成立したが、何が議論をここまで長引かせたのか釈然としない思いは残る。
 とはいえ、これで新税導入に基づく森づくり事業はいよいよ動きだすことになった。水源の涵養(かんよう)や県土の保全など、森林が持つ公益的機能を次世代に引き継ぐことの重要性は、今の人たちに課せられた使命 だ。県には貴重な財源を元に、持続可能な森づくりのための効果的、かつ効率的な事業展開を進める責務がある。同時に、都市部に比べて家計の収入が伸び悩んでいる中で新たな県民負担を求めたということを忘れて はならない。
 われわれ県民もただ税を負担するだけではなく、その使途や効果の検証に注意を払い、森林の保全に関する意識も今以上に高めていく必要があろう。
 本県の森づくりで喫緊の課題は、松くい虫被害で瀕死(ひんし)の状態になっている海岸林をどう回復、再生していくかである。先人が築いた松の緑を取り戻す試みは既に民間レベルで大きく動き始めている。
 秋田経済同友会は平成17年から松枯れ再生募金を行い、被害木の伐倒や植樹を手掛けている。電子部品メーカーのTDKは製造拠点である由利本荘、にかほ両市に総額2億円を寄付し、海岸林再生プロジェクトを応 援している。イオン環境財団やJRなどは秋田市下浜の海岸林再生に取り組んでいる。
 そうした企業や住民の熱意をつなぎ、どう後押しして県民共有の財産である海岸林を再生していけるか、県は優先的に取り組むべきだろう。長い時間を要する森林づくりにあって、目に触れる機会が多い海岸林の再生 は、税の導入効果をより多くの県民が実感できるはずだ。
 県は自民党の提案を受け、シンポジウム開催などの意識啓発の事業費を上積みしたが、単なるシンポジウム開催に終わらせてはならない。寺田典城知事が主張するように、環境税の創設などを国に働き掛けていく財 源としてもいい。本県の森林面積は県土の71%に相当する82万1000ヘクタール。温室効果ガスであるCO2を吸着する巨大な貯蔵庫でもある。
 京都議定書には、先進国の企業が発展途上国で温室効果ガスの削減事業を手掛ければ、削減分を自らの目標達成実績に加算できる排出権取引と呼ばれる仕組みがあり、国内でも動きだしている。その論からすれば 国内企業に等しくCO2の排出量に応じた税負担を求め、広大な森林を擁する地方にその吸着量に見合う交付税を設ける仕組みづくりも考えられるはずである。