ID : 5660
公開日 : 2007年 12月 5日
タイトル
森の巨人たち百選の上小阿仁村のコブ杉
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新聞名
世界日報
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元URL.
http://www.worldtimes.co.jp/col/every/ev071206.html
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元urltop:
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写真:
 
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遠くから眺めるのと、間近で見るのとで、これほど印象が違うのも珍しいのではないか。
 秋田県上小阿仁村(かみこあにむら)の上大内沢国有林にある「コブ杉」である(写真)。平成十二年に林野庁の「森の巨人たち百選」に選ばれた。
 コブを抱えた杉は全国にあるが、これほど幹に対しアンバランスなのは稀有(けう)。じっくり見ると、正面に猿のような動物の顔が見えてくるのは気のせいか。
 このコブ、脇から両手で抱え込むように巻いていて、背面は普通の幹である。幹回りは三・七七メートル、推定樹齢二百三十年。周囲には、木の手すりと板張りの回廊を巡らし保護している。
 村内を南北に通る国道285号の大林に「コブ杉」の案内看板があり、そこから県道37号に入り右に入る道を約二キロほど行くと上大内沢山村広場に着く。車を降りて小道を上り下りし十分ほどで国有林に至る。
 ぐずついた天気の晴れ間を狙って訪れたが、広場から小道に入ると山林特有の香りがし、子供のころ山で遊んだ記憶が蘇(よみがえ)る。赤や黄色に色付いた紅葉や、三十センチもありそうなホオノキの落ち葉が無数 に敷き詰められていた。葉の裏面に落ちた水滴が光を浴びて輝いている、そんな光景にも出会う。
 上大内沢国有林には七百八本の天然杉がある。秋田営林局が収穫試験地に設定していたことから、どの木も丁寧に手入れされ、すらりと伸びて美しい。
 昭和六十三年には自然観察教育林に選定された。最も高い木で五十六メートルあり、コブ杉の樹高四十四メートルは三百七十一位だった。
 コブは地上二-三メートルの所にあり、少し離れて振り返ると、多数の杉に紛れ込んでどれがコブ杉だかも分からない。
 微風がシダや笹の葉を揺らし、じっと耳を澄ますと、葉のこすれ合う音がする。遠くにチェーンソーの音。鳥のさえずりがかすかに聞こえてきた。
文と写真・伊藤志郎