ID : 688
公開日 : 2006年 4月 2日
タイトル
森林の守り手に企業を加えて 月のはじめに考える
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新聞名
西日本新聞
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元URL.
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syasetu/20060402/20060402_001.shtml
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元urltop:
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写真:
 
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大分、熊本、宮崎3県でホームセンターを展開するHIヒロセ(大分市)では7日、入社したての社員18人が大分県由布市にある由布岳のふもとに植林をすることになっています。
 新入社員による植林は今年で3回目となります。今回は伐採が終わった場所にケヤキやヤマザクラを計3200本植えるそうです。
 同社は大分、由布両市の山林保有者らでつくる「おおいた森林組合」と2年前の2月に協定を結びました。その指導の下で、社員を募って、この冬は枝打ちをしており、夏には下草刈りのボランティアも計画しています。
 2002年度から大分県が進める「企業参画の森づくり」のモデル事業の1つです。同県は昨秋、企業23社の参加を得て森林見学ツアーも実施しました。荒廃が進む地域の森林の現状を見てもらい、より多くの企業に関心 を持ってもらおうとしています。 社会貢献の柱の1つに
 地域の山や森林を守り育てよう。そんな動きが広がってきています。林野庁によると、森林づくりを目的としたボランティア団体数は03年10月現在で全国に1165あり、その3年前に比べ倍増しました。そこに、多くの社 員を抱え、資金力もある企業が森の守り手として積極的に加わってくることは悪いことではないでしょう。
 もっと企業が参加しやすい仕組みはできないか。林野庁はそう考えて、今年2月、大手企業や地方自治体の担当者らを集めて「企業の森林整備活動に関する検討会」を設けました。いま、提言に向けた議論が続いてい ます。
 国有林の育成に企業の力を借りる制度としては、林野庁が1992年度から始めた「法人の森林(もり)」制度があります。国と企業が一緒になって森林の造成や育成にあたり、伐採後に収益を分け合う制度です。
 昨年3月末現在で全国で399件(合計面積約1864ヘクタール)あり、140法人が参加しています。
 九州では、サントリーが03年の九州熊本工場(熊本県嘉島町)の完成を機に、南阿蘇外輪山の国有林102ヘクタールで整備を進めている「天然水の森阿蘇」が代表格といえるでしょうか。
 法人の森林は契約期間が20―80年と長いなど課題もあります。そこで林野庁は短期間でも参加できる制度など選択肢を増やそうとしています。
 背景には経済環境の変化があります。製造業を中心に企業業績が回復を続けていることが追い風です。経営余力が出てきた企業に対し、社会貢献活動の柱の1つとして森林保護に取り組むように促そうと考えています 。 手が入らない森林増え
 だが、より深刻な問題は私有林にあります。九州7県の森林面積は約270万ヘクタールに上ります。内訳は国有林が約2割、県や市町村などが保有する公有林が約1割で、残る7割が私有林になります。私有林が多く、し かもスギやヒノキの人工林の比率も高い。九州の森林の特徴といえます。特に福岡、佐賀両県などは人工林の比率が全国平均を大きく上回っています。
 しかし、輸入材に押されて国産材の需要は低迷し、価格の下落が続きました。山村の過疎化や林業家の高齢化もあって、本来手を掛けていかなければいけない私有の人工林の管理がおろそかになってきているのです 。
 木が大きく育つには適当な空間が必要です。成長に合わせて木々を伐採しながら間隔を広げる間伐をする必要があります。しかし、間伐が行われなかったり、木材価格の回復が見込めないと伐採後に植林せず、丸裸の ままだったりする山も増えています。
 例えば、大分県では間伐対象森林の2割で間伐が放棄され、伐採跡地の25%で再造林が行われていません。
 そこで、防災などの観点から森林所有者に代わって間伐作業をするための財源を確保するなどとして、熊本、鹿児島両県に続き、大分、宮崎両県が導入したのが森林環境税です。
 5年間の限定で、個人は年間500円、法人は1000円から4万円を県民税に上乗せし、財源とします。
 台風などに備えて早急に手を入れなければいけないところもあるでしょう。ただ、税金の徴収という手法では、県民に当事者意識が生まれにくいという問題があります。
 森林環境税の一部は、森林や林業の現状について県民に知らせる広報啓発活動にも充てられます。しかし、全国に先駆けて3年前に森林環境税を導入した高知県でも、県民の意識が高まってきたとは言い難い状況で す。
 県民全体の認識を深めるためにはさまざまな工夫が必要でしょう。林野庁などのように企業を積極的に取り込んでいこうというのも1つの手です。
 阿蘇外輪山の森林約52ヘクタールを購入した肥後銀行(熊本市)は、行員や家族らによる植林や下草刈りなどの整備作業をしていく計画です。九州電力は、森林ボランティアを育てる熊本市の特定非営利活動法人(N PO法人)に対する資金援助を続けています。
 企業の組織力や資金力を活用する方法はいろいろありそうです。企業が森の守り手に加わりやすい仕掛けを考える。経済に明るさがみえてきたいまが、そのタイミングといえそうです。「 =2006/04/02付 西日本新聞朝刊=」