ID : 4
公開日 : 2006年 1月 8日
タイトル
羽ばたく 夢を追いかけて<6> 林業再生を目指す
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新聞名
中日新聞
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元URL.
http://www.chunichi.co.jp/00/mie/20060108/lcl_____mie_____000.shtml
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元urltop:
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写真:
 
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豊かな下草の上に、樹齢百年以上というスギやヒノキがごつごつとした肌を見せる。「鳥の声もたくさん聞こえるでしょう? こんな森をつくっていきたいんですよ」。木の間に立つ吉田本家山林部代表、吉田正 木さん(27)=大紀町滝原=の顔には、三百年以上も続く家業を継いだ気負いはなく、“山の番人”としての笑みがあふれる。
   ■   ■ 「林業をやる」。保育園卒園の時にそう宣言した、と父親から聞かされたことがある。
 幼いころの休日はいつも、父親の車に乗せられて山を走り回った。苦しい時。楽しい時。常に山や木はそばにあった。身近すぎて「そんな宣言の記憶もなく、家業を継ぐのだろうなあ」という漠然とした思いだった。それ は、やがて、林業について学ぶうちに強い意志に変わる。
 例えば、一立方メートルの木を生産して運ぶのに、国産材は原油換算で三十六リットルを消費するのに対し、外国産材なら二百二十リットルも必要になるという試算がある。つまり、国産材の方が環境への負荷は少ない 。木は、時間がかかると言っても百年ほどで成長するが、原油は何千万年という単位だ。「環境問題も考えれば、国内林業ができること、やらなければいけないことはたくさんあるし、自分でもできるはず」。口をついて次 から次へと出てくる言葉に、危機感をばねに林業に携わる決意がにじむ。
 光明はある。家業を継いだ年に、ドイツに本部を置く森林管理協議会(FSC)の森林認証を取得した。従業員らと一緒に取り組んだ林業管理が国際的に認められた。「日本の林業は、植林、伐採で更新をしてきたが、お かげで、管理技術の蓄積ができていた」ことの証明だ。
 最近、管理する人工林と自然林の植物の種類を比べてみた。人工林の方が種類が多いという結果が出た。「管理がよければ、環境にやさしい森は造れる。公益性と経済性は相反するものではない」。少し、自信も芽生 えてきた。
 現場では、植林する前に下草をきれいに刈り取る「地拵(こしら)え」という作業を原則的にやめてみた。伝統的な作業にも、本当に必要性があるのか、疑問の目を向ける。「林業はすぐに結果が出る仕事ではないので 前例踏襲になりがち。ていねいにやりすぎて造林できなくなっては意味はありません」。下草をできるだけ残し、山を守る“緑のダム”にしようと発想の転換を試みる日々が続く。
   ■   ■
 父が握っていた車のハンドルを、今は、自分で操り、山を走り回る。
 「六十年以上前は三百年という木もあったのですが、戦争で供出してしまい今は二百年を超えるほどの木しかない」。残念そうな目の奥で、次の百年を見据える。国産材の価格も下げ止まりの気配を見せ、追い風を少し ずつ感じられるようになってきた。「数十年後には環境もよくなっていますよ」。ハンドルを握る手に力が入った。 (吉田 幸雄)
 FSCの森林認証 環境、資源保全などの面から適切な森林管理を目指して森林管理協議会(FSC、本部ドイツ)が認証している。「森林管理が計画的に実行されている」「人工林造りが天然林に影響を与えていない」な ど10の原則に基づいて審査され、認証された森林の木材にはFSCのロゴマークを付けることができる。県内では2000年以降、6カ所が「FSCの森」となった。