ID : 14584
公開日 : 2010年 12月31日
タイトル
赤谷プロジェクト:森回復に挑む先進地 群馬発の環境保全活動
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20100101ddlk10040093000c.html
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元urltop:
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写真:
 
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地球温暖化対策が世界的な課題となるなか、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を吸収する森林の価値が、改めて注目されている。県内では、みなかみ町北部に広がる国有林「赤谷の森」を舞台に自然林 の再生、生態系の回復を目指す「赤谷プロジェクト」が進んでいる。地元住民と自然保護団体、林野庁の3者が、森林管理の計画段階から手を携え森のあるべき姿を追い求める、全国に先駆けた取り組みだ。10年には5 カ年の森林管理計画の更新も予定しており、人と自然の共存を目指した新しい環境活動を、全国に発信している。【鳥井真平、喜屋武真之介、塩田彩】
 ◇エリア1◇
 ◇自然林の再生
 プロジェクトの核となるエリア。最も自然林が豊富に残っており、希少な生物が数多く生息している。一方で人工林となっている場所もあり、自然林の再生と多様な生態系の回復が図られている。
 ◇エリア3◇
 ◇水源機能の回復
 法師山から法師沢やムタコ沢を経て、下流部の集落の水源・温泉源になっており、水源機能の回復が図られている。80年代にはスキー場建設が計画され、水質汚染を懸念した地元住民が反対運動を起こした。
 ◇エリア4◇
 ◇森と歴史の交流
 豊かな自然が残る一方で、長い歴史の中で人々に親しまれてきた三国峠や旧三国街道が残る。森と人とが共生する歩道を目指し、エコツーリズム実践の場として期待される。また、渓流環境復元を目指し、治山ダムの 中央部が撤去された。
 ◇エリア6◇
 ◇人工林の活用
 人工林の割合が最も高く、林道の敷設もエリア全域に及んでいる。人工林の森で、生物の多様性を高めるための取り組みが進められている。
 ◇赤谷プロジェクト、舞台は1万ヘクタールの国有林
 04年に始まったプロジェクトの正式名称は「三国山地/赤谷川・生物多様性復元計画」。イヌワシやクマタカなどの猛きん類が生息し、豊かな自然をはぐくむ天然のブナ林などが広がる国有林「赤谷の森」(約1万ヘク タール)が舞台。「AKAYA(赤谷)プロジェクト」の略称で呼ばれる。
 森を六つのエリアに分け、それぞれにテーマを設けたほか、新潟県境に広がる「緑の回廊・三国線」も活動範囲に加えた。
 「自然林の再生」などを掲げたエリア1、2では、約3000ヘクタールの人工林を、実験的に数カ所で伐採。さまざまな動植物が生息・生育する自然林に復元しようと、人為的な植樹などは行わず、自然の力による回復に 委ねる。日本自然保護協会副部長の茅野恒秀さん(31)は「5年経過して、ブナやミズナラなどの広葉樹の生育が見られる。森は回復し始めている」と手応えを語る。
 エリア4では、09年10月から11月にかけて、治山ダムによって阻害された渓流の連続性を復元しようと、全国で初めて治山ダム中央部の撤去も行われた。今後は、魚類の生息分布や土砂の流況などを調べる。
 スタートから5年あまり。プロジェクトを構成する▽地元住民による赤谷プロジェクト地域協議会▽日本自然保護協会▽林野庁関東森林管理局--の3者が、議論しながら検証作業も進める。10年には森林管理の5カ 年計画を更新する予定だ。林野庁の計画策定作業に、住民や自然保護団体が参加するのは全国でもまれ。林野庁関東森林管理局計画部長の藤江達之さん(50)は「今までの成果をどのように次につないでいくかが大き なテーマ。3者でよく話し合って、長期計画で森の取り扱いを考えたい」と語る。
 ◇開発反対派と国が協働
 プロジェクトは、ダムやスキー場開発計画への反対運動を展開した地元住民や自然保護団体が、計画の頓挫後に「敵」だった林野庁に参加を呼び掛けるという、ユニークな過程を経て実現した。
 バブル経済期の88年、林野庁が地域振興などを目的に、国有林にスキー場などのレクリエーション施設建設を掲げた「ヒューマン・グリーン・プラン」を策定。赤谷川では80年代から首都圏の渇水対策として「川古ダ ム」の建設計画も進んでいた。
 地域住民が90年、開発の危機にさらされた自然を守ろうと「新治村の自然を守る会」を結成。日本自然保護協会とともに反対運動を展開した結果、ダムとスキー場は00年、いずれも計画が中止になった。その後、残さ れた自然を保護するため、協会が林野庁に働きかけ3者と旧新治村関係者による準備会議が発足。企画運営会議などを経て04年、プロジェクトがスタートした