ID : 15065
公開日 : 2010年 2月19日
タイトル
間違いだらけの国内林業“衰退”宿命論
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新聞名
ダイアモンド・オンライン
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元URL.
http://diamond.jp/series/inside/10_02_19_001/
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元urltop:
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写真:
 
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 2月5日と6日、東京・秋葉原で、「森林の仕事ガイダンス」が催され、林業に関心をもつ老若男女が2000人以上集まった。俳優の菅原文太氏による農林業復興に向けた活動のトークショーや、林業従事者による仕事内容の紹介、林業就業相談会などが行なわれた。 今年度で9年目を迎え、東京のほか、1月に名古屋と大阪で開催された。認知度は高まり、各会場とも参加者の数は上々。「ここ2年間は不況で、失業者が林業に関心を示し来場するケースが増えている」と主催者の全国森林組合連合会は言う。 林業は、若手の就業者不足に直面している。ガイダンスの主な目的は、林業に関心のある人を就業に結びつけることにあり、成果は出ている。 ガイダンスを資金面で補助するのは農林水産省林野庁の「緑の雇用担い手対策事業」だが、以前は1800人程度だった年間の新規就業者が、この事業が始まった2003年度以降、平均で3200人程度と1.7倍になっているのだ。 同事業は、新規に人を雇用した林業事業体に、教育費などの面で支援している。期間は最長3年で、初年度は新規雇用者1人につき年90万円を補助している。「この制度を利用することで、数年ぶりに新規採用した事業体が出てきている」(連合会)という。 見方を変えれば、それだけ林業の経営が厳しいということだ。人を新規で雇う余裕がないため高齢化が進み、全国で4万7000人弱の就業者の中で65歳以上の高齢化率は26%超にも及ぶ(全産業の高齢化率約9%)。  林業の産出額は、1980年の1兆2000億円弱をピークに、2007年で4414億円と下がってきた。国内の木材価格も下落が続いてきた(スギの立木価格でピークの7分の1に)。この事実は、「林業は衰退産業」という一般的なイメージを裏付ける。 しかし、森林の資産は相当なもの。国土に占める森林面積比率は、日本は世界第2位で68%(1位はフィンランド74%)。森林面積は日本2500万ヘクタールで、フィンランド2300万ヘクタールやスウェーデン2800万ヘクタールなど北欧の森林国と肩を並べるほど豊かだ。 にもかかわらず、日本の林業の経営が厳しいのは、「森林所有が分散して事業体が小規模」「機械化が遅れている」「木材の搬送ルートが整備不十分」などから、全体として生産性が低いためだ。 ただし、近年、追い風が吹き始めている。第一に、中国を中心とした新興国の木材需要が急増する一方、ロシアなど木材供給国が輸出税を増やすなど制限をかけており、木材価格は上昇傾向にある。 第二に、地球温暖化対策で、森林価値が高まっている。日本政府はCO2吸収のために森林整備に注力すべく、間伐面積を07年度より従来水準に比べて毎年20万ヘクタール増やす計画を実行している。間伐とは、森林全体の成長を適正化するために木を間引くこと。これにより林業の仕事は増える。 しかし現状は、この追い風を活用する流れにはない。民間の森林主とすれば、木材の販売収益が上がらなければ、費用増となる間伐などをわざわざ行う気にはならないからだ。間伐をしない森林は通常、衰退していき、価値が低下してしまう。 そして、間伐などの仕事が増えなければ、新規就業者が増えず、林業の技術が後世に伝承されない。林業全体で悪循環に陥っているのだ。 こうした「市場の失敗」が発生する中で、公共財でもある森林や林業の技術が衰退していくのだから、これを国が補助金を出して防止することには意味があるはずだ。 しかし、「緑の雇用担い手対策事業」は、来年度の2012年度で当初予定の5年計画が終了し、「存続か否かについては白紙状態だ」(林野庁)。 しかも、同事業予算は余り気味で、林野庁は昨年、会計検査院から、需要に見合った補助金を交付するように指摘された。当初見込みよりも、事業体からの補助金申請が少なかったのだ。「林業の仕事量が不安定なため、たとえ補助金が出ても3年間程度では、新規雇用に踏み切れない事業体が多い」(全国森林組合連合会)のが実情なのだ。 確かに事業予算が多すぎるのは問題で、需要に見合った規模への縮小は必要だ。だが、この事業を中止してしまうと、新規就業者が大幅に減ってしまい、必要な技術が伝承されなくなってしまう可能性が高い。 根本的な問題解決策は、林業の採算性を高める生産の効率化、そのための事業の集約化などを進めることにある。当然、その実現には時間がかかるから、同時に、国有林の整備など国として必要な仕事は着実に行ない、新規就業者を一定数生み出す仕組みが必要だ。