ID : 15134
公開日 : 2010年 2月26日
タイトル
J-VERで変わる住友林業の環境戦略 社有林で獲得した削減クレジットを外販
.
新聞名
南日本新聞
.
元URL.
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/special/20100218/103234/?P=1
.
元urltop:
.
写真:
 
.
住友林業は400km2以上もの広大な社有林を保有している。宮崎県の社有林における取り組みが、J-VER(オフセット・クレジット)制度の森林吸収プロジェクトとして登録された。厳しい審査を通過した経験を活かして、今後は他社のJ-VER取得もサポートする。山村再生支援センターが開いた第2回山村きぎょうセミナーから、住友林業山林環境本部山林部の岡田広行チームマネージャーの講演を紹介する。
森林経営に付加価値を与えるJ-VER

住友林業山林環境本部山林部 岡田広行チームマネージャー 愛媛県新居浜市の別子銅山で、採掘で荒廃した山林を緑化するため明治時代に植林を始めたのが住友林業のルーツ。現在は、北海道、近畿、四国、九州に合計415.32km2の社有林を保有している。
 2006年9月には、持続可能な森林管理を証明するため、第三者機関「緑の循環認証会議(SGEC)」による森林認証を、すべての社有林で一括取得した。社有林のCO2吸収量は京都議定書に基づく方法で算定し、毎年出版する環境報告書へは10年ほど前から公表している。2008年度の吸収量は11万6000t-CO2。社有林での2009年度の炭素蓄積量は1009万8000t-CO2だった。
 海外では木質バイオマス(生物資源)発電によるCDM(クリーン開発メカニズム)事業などを行ってきたが、国内では社有林を活用した排出削減事業は手掛けてこなかった。国内の森林吸収分は京都議定書の目標達成のために国が扱っていて、これまで企業は吸収量をクレジットなどにしたりすることができなかったからだ。
 2008年11月、「オフセット・クレジット(J-VER)制度」が施行された。当社が長い間待ち望んだ社有林の森林吸収量をクレジット化できる制度だった。宮崎県にあるスギの人工林が広がる3.37km2の社有林のうち、1990年以降に森林施業を行った2.2km2を対象とした事業を申請して登録を果たした。今のところ「持続可能な森林経営促進プロジェクト」として同制度に登録された唯一の例だ。
 現在、J-VERを外部に販売していくための市場調査を進めている。第1号なので後に続くところを考えて高く売りたいが、それだけではなく、当社の森林管理をよく理解してくれるところに買ってもらいたいと思っている。
 森林吸収型J-VERは地域を意識したオフセットが可能なので、宮崎県という地域性を前面に打ち出してアピールしていく。環境負荷が非常に少ないクレジットというイメージも大事だ。社有林では希少な動植物を記載した独自のレッドデータブックを作成し、動物類のモニタリング調査を実施している。森林認証、生態系保全、生物多様性確保などの取り組みを継続し、上質なイメージを守っていく。
 森林経営にとっては木材収益が第一。J-VERの取得は、そこに新たな付加価値を与える。当社はJ-VERに森林、企業・団体、消費者の3者を能動的につなぐ役目を期待している。
 これまで森林が持つ公益的機能は対価になりにくく、森林管理の一部は補助金、つまり企業・団体、消費者が収めている税金をいただきながら進めてきた。J-VERを活用すれば森林とこれらの者とを直接結び付けることができる。補助金との併用もできるJ-VER制度は、森林所有者にとって非常にありがたい制度だ。
-VERの課題は林業の実情とのズレ
 森林吸収型J-VERの審査は厳しかった。登録の可否が決定される委員会の直前まで、意見交換や議論が続いた。林業は広域にわたって事業を行うので、管理には統計的な手法も使う。ある程度のアバウトさも必要。そのため審査で求められる細かい基準を満たすのに非常に苦労した。
 「持続可能な森林経営促進型」の事業として申請する場合、対象とできるのは1990年度以降に間伐、主伐、植栽を行った面積と定められており、約20年前までさかのぼる必要があった。いつどれくらいの面積で間伐したのか厳密に証明するのは困難な場合がある。企業には書類の保存期限があり、それを超えてさかのぼるのは難しい。また、独自に整備してきた森林GIS(地理情報システム)も面積などの数値が施業の実績と端数まで合うとは限らない。当社ではほとんどないが、森林の所有に関して境界があいまいな場合もある。
 J-VERは目に見えないCO2を扱う商品なので、信頼性の確保が大事なのはもちろんだが、日本の林業の実情に合った制度にしていってほしい。行政だけでなく、森林吸収によるJ-VERを創出する山側も、管理方法などを改めて整備し直す必要がある。
 当社のこれまでの経験を生かし、他社の社有林の活用や森林管理・経営を積極的に支援していきたい。
2009年9月の第2回山村きぎょうセミナーから採録講演タイトル:持続可能な森林経営と森林の新たな価値の創造
講演者:住友林業 山林環境本部山林部 チームマネージャー・岡田広行氏