ID : 15224
公開日 : 2010年 3月 5日
タイトル
公共事業はどこへ:/2 「素人商売」阻む壁
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100305ddm002020071000c.html
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元urltop:
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写真:
 
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「新分野進出は年々厳しくなっている。再びやりたい思いはあるが、本業を維持するのが精いっぱい」。岩手県二戸市の建設会社「丹野組」の丹野明法社長(37)は、1年で断念した「新事業」を振り返った。
 県の勧めもあって05年、地元の間伐材などから作るボイラー用燃料「木質ペレット」の製造・販売事業への進出を目指し、林業会社や県などと研究会を設立した。体力の落ちた高齢社員の雇用維持や、「大きなもうけは期待できないが、地域のためなら」との思いからで、国土交通省の補助も得られた。
 しかし、すぐ壁に突き当たった。最大の問題は販路の確保。県は「新たな公共福祉施設が建てば使える」というが、建設の計画はない。1台数千万円のボイラーを設置してまで使う企業も見つからない。工場建設などに必要な1億5000万円の投資も回収の見込みがたたなかった。
 東北新幹線の関連工事は終わり、民間工事も減っている。資金の余力は少なく、丹野社長は「行政の財政支援や方針が伴わないと、投資に踏み出せない」と話す。
 公共事業の減少で、全国の建設業者の間では約10年前から、農業や福祉などに活路を求める動きが広がった。国交省など5省は04年、地方の産業構造転換につながるとして、補助など新分野支援策をまとめた。
 だが、新分野進出は進まない。岐阜県の場合、県建設業協会によると、03~05年に進出した104社のうち60社が撤退した。同協会は「専門知識がなく、販路も確保できなかった」と分析する。
 資金確保の課題も大きい。茨城県のある業者は「新分野は最初は赤字が当然なのに、金融機関が黒字の本業への融資まで止めた例が多発し、倒産する社も出た」と話した。
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 岐阜県建設業協会は「素人商売」で失敗した教訓を生かし、国の補助も受け08年から、業界を挙げて森林組合と共同で林業への進出を進めている。参加する建設業者の作業員は森林組合の指導で間伐などに取り組む。木材搬出に必要な道造りなど、得意分野の作業もする。作業効率化へ向け、所有者が多数にまたがる山林の集約化にもかかわっている。
 長瀬土建(岐阜県高山市)の長瀬雅彦社長(48)は「3年後には利益を出したい。我々と国の方針は一致している」と期待する。昨年12月の政府の緊急経済対策でも、同様の取り組みが林業再生の具体策に挙げられたからだ。
 しかし、昨年11月の事業仕分け。国交省が来年度導入を目指した新分野進出の支援策は「1件300万円程度では効果が薄い」などとして「予算見送り」とされ、来年度予算案に計上されなかった。前原誠司国交相は「転業支援を更に拡充していく」と強調しているが、具体的な道筋は示されていない。
 各地で建設業の新分野進出を支援してきた米田雅子・慶応大教授は「地方の業者は、農業や林業などと『複業化』することが重要だが、公共事業の削減速度が速すぎ、新産業を進める余裕がない」と警告する。