ID : 15529
公開日 : 2010年 3月30日
タイトル
ポスト京都で重み増す“炭素蓄積” 途上国の森林減少防止をCO 2 削減
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新聞名
nikkei BPnet
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元URL.
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/special/20100324/103458/?P=1
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元urltop:
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写真:
  図、表も掲載されていました
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ポスト京都では枠組みのほか「森林」の役割が変わる。先進国内では森林に加え、木材伐採製品もCO2吸収源として検討が進む。また、先進国の支援で途上国の森林減少・劣化対策を促す仕組みが導入されそうだ。
森林吸収源
 京都議定書では、1990年以降の新規植林か、人為的に管理した森林のCO2吸収量について、国別に定めた上限を超えない範囲で、削減目標の達成に利用できる。日本は京都議定書で温暖化ガスを90年比6%削減の目標を約束したが、森林吸収源で最大3.9%まで賄える。ただ、これまでの森林管理の実績では吸収量は3.2%止まりと算定されており、今後の森林対策が急がれている。
 いずれにせよ、2008~12年の京都議定書第1約束期間では、吸収源が目標達成の影の功労者になる。
 京都議定書の特別作業部会では次期枠組みでの森林吸収源の扱いについて議論し、2008年のバンコク会合で第1約束期間と同様に目標達成に使用できることで了解した。とはいえ、算定方法については、各国間で見解が分かれており、これまでの会合ではまとまっていない。
EU方式なら日本は「排出」 日本は現行と同じ「グロスネット法」を主張しているのに対し、EU(欧州連合)は「ネットネット法」を推している。前者では管理した森林が約束期間中に吸収した全CO2を算定できるのに対し、後者は、基準年の吸収量と約束期間の吸収量の差をとり、プラスなら吸収、マイナスなら排出と計上する。EUがグロスネット法からネットネット法に変えるべきと主張する理由は、後者の方が森林管理の活発化を促す点と、過大な吸収量を回避できるからだ。だが、ネットネット法では若い森林が増えているEUではおのずと吸収になるのに対し、日本のように成熟した森林が多い場合、実際には吸収しているのに排出になってしまう。
 2020年における日本の森林吸収量を試算すると、グロスネット法では2.9%の吸収になるが、ネットネット法では1.5%の排出になった。これでは目標達成に貢献するどころか、足を引っ張ることになる。
 両方式を巡る議論が平行線をたどるなか、EUは昨年「参照レベル法」という折衷案を提案してきた。これは各国が吸収量の基準値となる参照レベルを設定し、実際の吸収量との差を参入するというものだ。参照レベルをゼロにすればグロスネット法と同じになる。日本は同法の場合、ゼロに設定する方針だ。EUでは参照レベルをBAU(成り行き)に設定する国が多いもののまとまっていない。今後の議論は、参照レベルの設定方法が焦点になる。日本の「ゼロ」が認められ、2.9%の吸収量を確保できるかは予断を許さない。
REDD ほとんどの議題で進展が見られなかったCOP15において、成果のあった数少ない分野が「REDD」だ。REDDとは、「途上国における森林減少・劣化からの排出削減」と訳される。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次評価報告書は、地球上のCO2排出のうち約20%が森林減少によると分析している。REDDは手を打たなければ減ってしまう森林を守り、炭素蓄積を維持することでCO2削減とみなす概念だ。削減分を排出枠として売却できるのか、基金などを通じて資金を還流させる仕組みにするのかは未定だ。
コペン合意でも後押し REDDの対象とする森林管理の範囲を広げる議論があり、森林の減少・劣化の防止に加えて、積極的に炭素蓄積を増やす行動も含める「REDDプラス」という考え方も提案されてきた。REDDはブラジルやインドネシアの熱帯雨林のように森林減少が止まらない地域が対象だが、「プラス」が加わることで、インドや中国など森林減少の止まった国においても森林管理の強化や植林などで炭素蓄積を増やせば、排出削減となる余地が出てくる。

●REDD(プラス)の概念図 コペンハーゲン合意に「REDDプラスのようなメカニズムを早急に立ち上げる行動を促す必要がある」との文言が盛り込まれたことで、REDDプラスまで広げた仕組みを推進する方向性が加速しそうだ。
 森林総合研究所の松本光朗・温暖化対応推進室長は、「REDDは対立の激しい先進国と途上国を結ぶ接着剤の役割を果たしている」と言う。
 これまでも京都議定書にはクリーン開発メカニズム(CDM)による植林事業で森林から排出枠を生み出す制度があった。ただし、プロジェクト単位でしかも商業植林は該当しないなど、案件が増えなかった。
 これに対しREDDは今ある木を守ることで金銭的な価値を生む。基本的に国単位で森林を管理し、炭素蓄積量をあらかじめ試算したベースラインと比較することを想定しており、資金支援する先進国にとっても、植林CDMとはけた違いの排出枠を獲得できる可能性を秘めている。
 松本室長は、「REDDにはMRV(測定・報告・検証)の仕組みが不可欠。人工衛星や航空機による遠隔測定と現場のサンプル調査を組み合わせた森林モニタリング手法などCOP15でも着実に議論が進んだ。日本が持つ森林管理や測定技術を生かしながら、排出枠を獲得できる可能性もある」と期待する。伐採木材製品
 京都議定書では、森林を伐採し木材を林外に持ち出した時点で、すべての炭素をCO2排出として計上する。だが、実際は伐採された木材は、家や家具、ボード、紙など製品として利用されながら、炭素を蓄積し、CO2の大気放出を抑えている。
 そこで、京都議定書の特別作業部会では、伐採木材製品の炭素蓄積量を算定できる仕組みを議論してきた。現行の算定方式が「伐採・即・排出」(「デフォルト法」という)であるのに対し、「伐採・利用・廃棄(焼却・埋め立て)時排出」という考え方を検討している。
国産材利用の機運を高める 廃棄時排出を採用した場合に意見が分かれるのは、輸入木材の炭素蓄積や排出を輸入国と輸出国(木材生産国)のどちらに帰属させるかだ。いくつかの方式が議論されてきたが、2009年10月のバンコク会合で、EU(欧州連合)と日本の間では以下の方式で一致した。基本的に木材を生産した国が伐採木材製品の炭素蓄積や廃棄時の排出を計上する(「生産法」という)。つまり、国産材と輸出された国産材で作った製品が対象になり、輸入した木材製品は含めない。ただ、伐採木材製品の炭素蓄積を計上するには、製品分野ごとに集計し、輸出製品を計上する場合は国ごとに集計することも求める。

●伐採木材製品を巡るCO2排出時期の考え方 コペンハーゲン会合では、現行のデフォルト法だけの案1と、デフォルト法と生産法を選べる案2が提起され、途上国が案1、先進国が案2を支持。両論併記のままになった。
 日本国内に存在する木材伐採製品の蓄積量を生産法で試算すると、全CO2排出量の0.1%にも満たない。
 それでも日本が生産法を積極的に支持するのは、国内林業の活性化に追い風になるからだ。生産法の場合、輸入材を減らし国産材の比率を上げつつ、国産材で作った製品を長く使えば使うほど、炭素蓄積の計上が増える。これは、木材自給率を現在の約25%から50%以上に向上を目指す政府の林業政策とも合致する。
 森林総研の松本室長は、「伐採木材製品の炭素蓄積が計上できるようになると、バイオマス(生物資源)発電の前に、まず木材を材料として使い、最終的に燃料にする木のカスケード(段階的)利用が進む」とみる。
 伐採木材製品の炭素蓄積効果のほか、鉄やプラスチックからの素材代替効果も含めると、木材の積極利用による国内のCO2削減効果は、約1%になるとの試算もある。
 生産法が採用された場合、国産材利用の機運が盛り上がりそうだ。

日経エコロジー(2010年3月号)より
 上記の記事「ポスト京都で重み増す“炭素蓄積” 途上国の森林減少防止をCO2削減にカウント」は、『日経エコロジー』2010年3月号に掲載された記事です。なお、記事中に記載した内容については、『日経エコロジー』2010年3月号掲載時の内容となっております。 『日経エコロジー』は環境経営やCSR(企業の社会的責任)推進体制の構築、ISO14000の導入・運用を担当される方々に向けた、月刊ビジネス誌です。 『日経エコロジー』のコンテンツや最新号の記事エッセンスなどについては、こちらのサイトでご覧いただけます。 また『日経エコロジー』の年間ご購読の申し込みは、こちらで承っておりますので、どうぞよろしくお願い致します。