ID : 1201
公開日 : 2006年 6月15日
タイトル
木の家が、家族と森林を癒す(下)
.
新聞名
ライブドア・ニュース
.
元URL.
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2092481/detail
.
元urltop:
.
写真:
 
.
国産材を使用して木の家を建てようという運動を高めたい一方で、国土面積の約65%を森林で占めながら、消費される8割弱を外材に頼っているのが日本の状況だ。「東京の木で家を造る会」の稲木清貴事務局員は「傾斜があまりない広大な土地などに広がる森林を大量に伐採して輸入する外材に対し、急な山の斜面に植林して育てた国産材では、コストでまったく勝負にならないですよ」と話す。それに加えて、大量生産が可能な新建材も市場を大きく侵食している。
 国産材の需要が小さくなれば、林業従事者数は減少する。木が伐採されない山は荒れていくばかりで、密集した木で真っ暗な山が年々増えていく。そのような山には下草が生えないため、雨が降れば山肌を洗い流してしまう。生活できない現実を背負っている林業家などに山の手入れを頼むのは、虫がよすぎるというものだ。
 そもそも森林は「緑のダム」と呼ばれるほど保水機能が高い。それぞれの木が山肌に根を張り、成長した枝から葉が落ちると、腐って他の植物の肥料や小動物のすみかとなる。落葉などが積み重なって出来上がった土壌は、雨が染み込みやすい。森林総合研究所によれば、森林の場合の降雨直後の表面流失は25%だが、裸地の場合では、その2倍を超える55%が降雨直後に表面流失してしまうという。
 稲木さんは「国産材のコストは、外材や新建材の購入コストと比較すると、非常に高いと思われますが、環境面を考慮したトータルコストで考えれば、そうとは言い切れなんですよ」と木材に対するコスト意識改革を促す。例えば、木材輸出国の森林伐採跡地の環境問題は深刻化しており、植林が行われずそのままにされた跡地となって放置された平地や山は荒廃し、洪水などの原因となっている。
 その乱伐した外国の森林復旧のために、将来的に税金などを投入させられるとしたらたまらない。また、木材以外の新建材も例外ではない。製造する際にエネルギーを必要とするため、温暖化の面から見るとマイナスであるし、廃材にするときには、環境面のほかに処理コストも重くのしかかる。
 森林は1ヘクタール年間で15─30トンの二酸化炭素を吸収し、10─20トンの酸素を放出するといわれる。05年2月の地球温暖化に対する京都議定書で、日本は二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を90年に比べ6%削減することが義務づけられ、そのうち3.9%を森林によって吸収しようというものだ。
 森林が地球温暖化問題のほかに、水源地として重要な役割を果たしているのは疑う余地はない。一方で、ヒット家電商品などのライフサイクルと違って、木を育て木材として利用するまでには、昔も今も変わらず、最低でも約60年、通常で80年といわれるほど長い年月が必要だ。
森林をつくる家、職人とつくる家 東京都の荒れた山の森林を再生し、素晴らしい自然環境を取り戻すために生まれたのが、「東京の木で家を造る会」。入会したメンバーの建主になる人の好みや相性を考えて、家づくりメンバーとして登録されている設計事務所(10)、林業家(10)、製材所(1)、工務店(9)のなかから、それぞれいくつかを紹介しながらコーディネイトする。
 「入会した会員さんとそれぞれの職人さんとの顔の見える関係作りが大切ですね」と稲木さんは話す。また、建主さんの希望を聞くだけでなく、こだわるべきことと妥協すべき点などを歯に衣をつけずにしっかりアドバイスすることも忘れない。
 この会のユニークな点は、ハウスメーカーにすべてまかせるのではなく、職人さんと山の作業や木を切る作業などの体験を通じて、木、森林、山といった自然環境を学ぶということだ。そんななかで生み出される「都市のなかの森をイメージした木の家」こそが、そこで住む家族をはじめ、その家作りに参加する人たちから森林を育てる山々までを癒していく。