ID : 15593
公開日 : 2010年 4月 2日
タイトル
第3部「森」 恵み再び 木質バイオマスを燃料に使うボイラー。森の恵みは姿を変え、新産業への可能性を秘めている
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新聞名
山陰中央新報
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元URL.
http://www.sanin-chuo.co.jp/tokushu/modules/news/article.php?storyid=518834232
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元urltop:
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写真:
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隣接する木材加工工場から空中配管を通って、巨大なボイラーへ木片が次々と放り込まれる。ごう音と炎。650度の高温で生じた蒸気は、再び工場へエネルギーとして還流する。
 鳥取県日南町下石見の山あいにある木材団地の一角。訪ねた木材加工会社「オロチ」(森英樹社長)では、かつて捨てるだけだった木くずが、木質バイオマスの一つに姿を変えていた。
 オロチは、日野川上流域の豊富な森林資源を生かそうと、森林所有者らが出資して4年前に設立した。従業員は約40人。奇抜な社名は、周囲の豊かな山河と古代出雲神話に由来する。
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 「森と木を余すところなく使いたい」という森社長(54)は、まず人工林で放置される間伐材の利用に目を付けた。
 稼働して2年近くになる工場では、加工困難とされてきたスギを、高強度で狂いの生じにくい建材(LVL)にする。細かったり、曲がったりした木も製品化できる最新技術で付加価値を与え、廃材も生かす。
 LVLは丸太を大根のかつらむきのように削り出し、幾重にも接合する。その工程で活躍するのが、家庭用給湯器換算で200台分の能力を持つ巨大ボイラーの蒸気エネルギーなのだ。
 「丸太1本のうち、製品になるのは一般的に5割ほど」(森社長)だから端材や樹皮、おがくず、芯まで再利用する。今夏には、蒸気の圧力差を生かした発電設備も稼働させ、同社の電力需要の1割超を賄う。
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 持続的に再生産が可能な木質バイオマスと、LVL製造の要となる丸太の削り刃-。オロチの挑戦は他方、古くから日南町で盛んだった「たたら製鉄」文化と符合する。
 工場から約20キロ西の同町阿毘縁。炭焼き師の高木広一さん(81)は昨年5月まで、日本刀用の玉鋼を生産する「日刀保たたら」(島根県奥出雲町大呂)への木炭供給を一手に担ってきた。「上手に使ってやれば、木は無尽蔵な資源ですよ」。中国山地を知り尽くす長老の言葉は、森社長とうり二つ。
 高木さんの父親は、明治-大正期にたたら製鉄で生産量日本一を誇った隣の日野町の近藤家に仕えたという。山肌を循環するように、数年ごとに場所を変えて木を切り出す「輪伐」により、炭焼き師は森を若返らせながら製鉄燃料を調達した。
 往時は木炭が里からの”外貨”を呼び込み、山はにぎわい、潤った。その製炭業は石油が台頭した戦後の「燃料革命」で衰退。木質バイオマスという形の森の復権は、不思議な因縁になる。
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 縁と言えば森社長は20年ほど前、林野庁からの出向で日南町農林課長に就任。同庁を退職し、単身で町に戻ったのは「もう一度、山を生かすサイクルを」の思い。オロチが使う年間5万立方メートルの丸太は、森林組合に仕入れを委託している。
 石油一辺倒の時代が資源枯渇、地球温暖化で終わりを迎えた今、森社長は「林業が周回遅れのトップランナーになりつつある」と確信している。高木さんも、木々の循環を支える仕事がすそ野を広げれば「山の再生が見える」とする。
 森の恵みは、ニュー林業の台頭とともに、山村に再び夢と可能性を与えようとしている。