ID : 15728
公開日 : 2010年 4月13日
タイトル
育て 林業担う人材 「かながわ森林塾」
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000001004120005
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元urltop:
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写真:
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神奈川県の面積の4割は森林だ。林業人口は減少し、荒廃する森も増えている。林業で働く人を少しでも増やして現状を打開しようと、県は昨年度から未経験者を対象にした「かながわ森林塾」=キーワード=を始めた。塾のコースの中でも、林業に従事しようという意欲がある人たちを指導する「演習林実習コース」の実習が3月、松田町寄(やどりき)の山中であった。現場に同行した。(木村尚貴)   みぞれがちらついていた。 午前10時。先に山に入った塾生たちの足跡をたどり、山道を分け入った。登ること1時間。木立の間に、橙(だいだい)色のヘルメットがうごめく姿が見えた。  土壌流出を防ぐためのさくづくり。間伐した木から、さくに使うくいをチェーンソーで切り出す作業をする人、そのくいを木づちで打ち込む人、脇で支える人。塾生たちは、言葉少なく目の前の仕事に取り組んでいた。講師たちが、「くいはもう少し上だ」などと短く助言する。「受講生はこれまでの経験でスキルがついた。講師も手取り足取りは指導しない」と案内役の県森林再生課の本間範男さん(49)が解説した。  正午ごろ「そろそろ昼にするか」の声がかかった。木に腰掛けたり、地べたに座ったり。雨が上がり、間伐した場所から光が林床に届くと、全員が目を細めて空を仰いだ。  今回、森林塾を経て林業関係に就職が決まった、藤沢市の運送業椿井(つばい)繁さん(42)は登山好きで、いつかは山にかかわる仕事をしたかったという。「車の運転は時計ばかり気にするけど、山の中の時間はあっという間。体力的にはきついが、楽しいのは断然こっち」。平塚市のアルバイト渡辺一雄さん(26)は、大学卒業後に営業職に就いたが辞めた。昔、ボランティアでやった森林整備を思い出し、応募。「森の仕事は充実感がある。人間関係のストレスもない。木を切った後差し込む日差しが達成感の証拠」と話した。   ● 高齢化進み減る労働力 雇用増・若返りで確保  林業で働く人の数が細る神奈川。1985年度には482人いたが、減少傾向が続く。丹沢や箱根を中心に39カ所の林業組合や林業会社などがあり、県や市町村の森林整備を請け負ったり、木材を切り出して売ったりしている。この39カ所で現在約400人が働くが、うち3割弱は60歳以上。高齢化が着々と進む。  現状では、森林整備量に対し、労働者の数は足りていない。森林整備がないと林床に光が届かず、十分な植生が保てない。その結果、土が水を蓄える能力が落ち、土壌流出が起こってしまう。  こうした状況に答える形で立ち上がったのが森林塾の未経験者対象の2コースだ。研修、技術、体力面でバックアップする。本間さんは「実技中心で、ここまで長い間きめ細かくフォローするのは全国でも珍しい」と評価する。  今回同行した演習林実習コースでは、日当も8~9千円が出る。講師陣は、林業の現場で働くベテランたち。実習コースの参加者は、体験コースを修了した28人のうち15人だった。  3月下旬、この15人が実習コースを終えた。県が林業会社などに求人を促した結果、8人の就職が決まった。林業従事者の平均日当は1・5~2万円くらいと言われる。体力的にはきついが、人間関係は楽。朝は早いが、あがりも早い。8人はこうしたやりがいを求め飛び込んだ。「本当によかった」「これから森で頑張る」という意見が出た。  森林再生課の試算では、7年後には県全体で5422ヘクタールの森林整備が必要で、今よりも約50人多い労働者が求められる。森林塾が軌道に乗れば、毎年5人の雇用増と10人の若返りで十分な労働力を確保できるという。今年の成果は上々で、「来年以降も積極的に取り組みたい」としている。  今年度は5月に体験コースで30人を募集する。問い合わせは同課足柄駐在事務所(0465・83・8820)へ。  ◆キーワード◆ かながわ森林塾   県の森林整備とかながわ森林塾 県全体の森林面積は約10万ヘクタール。現時点では、そのうち鎌倉市の面積に匹敵する約4千ヘクタール分で、間伐やさく作りなどの森林整備が必要とされている。森林塾では、林業未経験者が、間伐や枝打ちなどの基本を学べる体験コース(10日間)、同コースを終了後さらにやる気がある人が進む演習林実習コース(80日間)が2009年に新設された。実習コース受講者は、刈り払い機やチェーンソーの資格が取れ、林業関連の就職口の情報も伝えられる。