ID : 2088
公開日 : 2006年 11月16日
タイトル
紅葉・落葉・・・大江山/京都府福知山市
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://osaka.yomiuri.co.jp/flower/fl61116t.htm
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元urltop:
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写真:
 
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鬼伝説で知られる大江山、主峰の千丈ケ嶽(832m)山頂付近はさまざまな落葉広葉樹に包まれている。ブナの黄葉は終わっていたが、紅葉の最終ランナーのカエデは色づきがまだ進み、山道に敷き詰められた落葉とともに晩秋の山の豊かな表情が味わえる。
 源頼光らが酒呑童子を討ったという伝説にちなみ「鬼博物館」などが建てられた「酒呑童子の里」から林道を西へ進み鬼嶽稲荷神社に着く。ここがすでに標高630m、東側の丹波から丹後にかけて連なる山々の赤く染まった姿が正面にとらえられる。
 社殿の西側から回り込むように山道を上がっていった。神社の上手にはブナ林が続いている。残念ながらブナの黄葉の季節は11月初めで終わったようで、一部の木に名残の黄葉がわずかに残っている程度。葉を落とした厳しい冬のたたずまいに装いを変えている。幹の直径が70cmを超える木も多く、これまで訪ねた近畿のブナ林の中でも堂々とした風格を感じさせる。広葉樹林帯に割り込むようにして杉の植林が行われており、以前はもっとブナ林が広がっていたのだろう。
 ミズナラ、リョウブなどの広葉樹はすでに葉を落としたものが多く、山道は落葉で敷き詰められている。長さ40cmを超す大きなホオノキの葉やトチノキの葉の葉にマンサクの赤い葉なども混じって、落葉を拾いながら歩くのも楽しい。
 落葉が進む中でカエデの仲間は、今秋の冷え込みの遅れもあってまだまだ紅葉が楽しめる。ウリハダカエデはすでに落葉が始まっているが、ハウチワカエデは青葉が残った部分と、最近の冷え込みで急に色づいた葉が混じり、一本の木でも紅葉が深まっていく色合いの変化が楽しめる。
 標高差200mほどのなだらかな道なので、紅葉を見ながらでも30分ちょっとで頂上に着く。樹林がなく笹原が広がっているので、丹後・但馬の国境に並ぶ西側の山々が見渡せて心地よい。
 頂上からは北東へ鳩ケ峰(746m)、鍋塚(763m)に至る尾根道が続いている。今回は天候が崩れてきたことから鳩ケ峰の手前で折り返して鬼嶽稲荷神社に戻った。現在地の社は江戸時代後期に伏見大社から神号を受けて建てられたというが、ずっと前は頂上近くに社があったと伝えられている。
 今の登山道より東側のブナ林を上がる小道をたどっていくと、高さ4、5mの滝が流れ落ちて水飲み場となり、不動明王の石像が立っていた。さらに上がると大きな岩のたもとに小さなほこらが建てられている。また、神社からふもとの登尾に向かう道を少し下ると、巨岩のくぼみに「鬼丸稲荷大神」をまつる小さな鳥居があった。なだらかな山容のようでありながら、岩場も結構あり、こうした場所を伝って山頂までが修験の道になっていたのだろう。
 かつて御嶽と呼ばれていた大江山と鬼伝説のつながりはよくわからないところがある。聖徳太子の弟の麻呂子親王の三鬼退治と、説話などでより有名な源頼光らの酒呑童子退治があるが、酒呑童子の出る大江山は京の西外れの大枝とする見方が強い。修験で使われた岩場が鬼の岩屋とされ、御嶽が鬼嶽と転化して伝承が作られていった可能性もある。一方で、京と丹後の日本海を結ぶ重要な道の奥深くに立つ大江山が、広い範囲の人々に畏怖をもってみられ、修験の山とともに鬼の棲む山としてイメージ化されていったことは事実だろう。