ID : 2286
公開日 : 2006年 12月14日
タイトル
増える企業の森林保全活動
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://osaka.yomiuri.co.jp/tokku/cp61214a.htm
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元urltop:
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写真:
 
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森林の保全活動に乗り出す企業が増えている。地球温暖化の防止など、環境への貢献をPRできるメリットがあるからだ。林業の低迷で荒廃する森林が増え、対策に頭を悩ませる自治体側も、優遇制度を整えて参入を促している。
家族と共に植樹をするシャープの社員(奈良県明日香村で) 奈良県明日香村の県有林で10月、ソメイヨシノやクリなど約450本の苗が植えられた。植樹に汗を流したのは、近くの葛城市や天理市などに工場を持つシャープの社員、家族ら約400人だ。今後も定期的に、草刈りなどを行うという。
 シャープは2003年春、「シャープグリーンクラブ」を立ち上げ、社を挙げて森林保護に取り組んでいる。大阪府岸和田市などでも活動を始めており、来年中には、各地の工場近くの10か所以上に増やす考えだ。
 「企業イメージの向上に加え、社員の環境意識が高まり、商品作りにも生かせる」(広報室)と利点を説明する。
 業種によっては、森林保全が製品の品質維持につながるケースもある。サントリーは昨年5月から、大阪府と京都府にまたがる天王山で植樹や草刈りなどに乗り出した。一帯は、ウイスキーを製造する山崎蒸留所の水源地。森林には雨水を濾過(ろか)する作用もあるため、長期的に手入れしていく方針だ。キリンビールも昨年1月から、ビール工場のある滋賀県多賀町で同様の取り組みを始めている。
 林野庁によると、1970年に116万人いた林業従事者は、90年には43万人に減少した。間伐などの手入れを怠った森林では土砂崩れなどの災害が起きやすくなるが、担い手不足で放置されているケースが多く、自治体は対策に懸命だ。
 大阪府は今年4月、府内の大規模工場などに排出するCO2の削減量を報告させ、公表する「府温暖化防止条例」を施行した。この中で、森林1ヘクタールを保護すると、年間6トンのCO2を削減したとみなす規定を盛り込んだ。これと同時に、市町村や森林組合に企業を紹介する「アドプトフォレスト(森の養子縁組)」事業を始めたところ、シャープや日本アイ・ビー・エムが名乗りを上げた。年内には5社に増える見込みという。
 和歌山県も02年から、地元の森林組合や市町村に企業を紹介し、無償で森林を保全してもらう取り組みを始めた。参加すると、企業が毎年発行する環境報告書に、県の「お墨付き」で森林面積に応じたCO2の削減効果を記載することができる。これまでにダイキン工業や東洋紡など23社が参加している。林野庁も企業の参画を後押しする方策について検討を始めた。
 京都大フィールド科学教育研究センターの芝正己助教授(森林資源管理学)は「欧州では10年以上前から、森林を守ることが企業のステータスにつながっている」と言う。日本での取り組みについて「現在は都市部にある工場の周辺という“点”にとどまっているが、これを地方へ広げ“面”にしていけるかどうかが課題だ」と指摘する。