ID : 2562
公開日 : 2007年 1月24日
タイトル
松食い虫 北上阻止せよ!
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/zoomup/zo_07012401.htm?from=os1
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元urltop:
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写真:
 
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 野ざらしの棺のような白い塊が、森のわきに延々と連なる。ホラー映画を思わせる不気味な光景は、青森県が、秋田との県境に設置中の「松食い虫被害」に対抗する防除帯だ。
 「青森まで、あと250メートル……」。昨年夏、県境に隣接する秋田県八峰町の民有林で、枯れたクロマツの幹から元凶となるマツノザイセンチュウが見つかった時、関係者は予想を上回る被害の北進の早さに言葉をつまらせた。
 一昨年の被害木の最北端は、県境の南約4キロの地点。一気に加速して迫ってきたことになる。危機感を抱いた青森県はすぐに「被害防止緊急対策強化事業」を立ち上げ、県境から北約6キロを「特別予防監視区域」に指定。監視態勢を強化する一方、同区域の北側2キロと南側1キロの区間に防除帯を作ることを決めた。
 標高約200メートルまでのマツを約1億円かけてすべて切り倒し、殺虫剤を散布した後、時間がたてば分解する環境対応の白いシートで覆う。3週間ほど放置した後は、土地の所有者がストーブのまきなどとして使う。
 秋田県立大・生物資源科学部の小林一三教授(69)は「被害木周辺の伐採はこれまでもやってきたが、被害が出ていない地域のマツを防除帯として伐採するのは、極めて大胆な策」と言う。
 現在、作業は3分の2ほど進んでおり、暖かくなって虫が活動を始める前に完成させる計画だ。
 青森県西北地方農林水産事務所の細川正義・林業振興課長(57)は「貴重な緑を失ってしまう苦肉の策だが、海からの潮風を防ぐマツが全滅してリンゴ栽培などに影響が出る事態を考えると、背に腹は代えられない」と複雑な表情を浮かべる。
 被害が出ていないのは、もう北海道と青森県だけ。みちのくの深奥に築かれる〈絶対防衛ライン〉の効果に、期待は切なく募る。
カメラとペン 立石紀和
 マツノザイセンチュウ マツノマダラカミキリの体内に寄生し、幹内で爆発的に繁殖。樹液の循環を止めて木を枯らせる。1905年に長崎県で初被害。その後、北上を続け、1982年には秋田県に到達。カミキリが寒さへの抵抗力を付けたことや温暖化の影響で生息範囲が広がった。