ID : 5585
公開日 : 2007年 12月25日
タイトル
企業参加の「森づくり」広がる、社会貢献の姿勢アピール
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200712250038.html
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元urltop:
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写真:
 
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手入れされずに荒れ果てた里山の再生に向けて、企業参加の「森づくり」が脚光を浴びている。企業側は社会貢献の姿勢をアピールでき、財政難にあえぐ行政にとっても森林保全のための費用や労力を企業に肩代わりしてもらえるメリットがある。こうして整備された森林は、京都議定書で義務づけられた温室効果ガスの削減目標の数値として組み込むことができるため、自治体が企業に送る視線は熱い。ただ、里山再生の長期ビジョンをどう描いていくかは、白紙のままだ。

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 枯れた松林が目立つ大阪府岸和田市の神於山(こうのやま)(標高約296メートル)。その山腹で月2回の土曜、シャープ(本社・大阪市)の社員約30人が、地元住民と一緒に下草刈りや植林活動に汗を流す。家族を含む約300人が参加したボランティアイベントも年に2回、企画されている。冬場は、竹林の伐採や森の植生調査などに取り組む。
 同社は昨年2月、山林約2ヘクタールを5年間管理する協定を所有者と締結。地域の清掃活動などに携わる社員の間で、「結果が実感できるボランティアがないか」と声が上がったのがきっかけだった。「シャープの森づくり」と名づけた活動は今、工場のある奈良、広島両県など全国7カ所(計約15ヘクタール)に広がる。
 今年6月の株主総会で初めて社会貢献活動が取り上げられ、こうした取り組みが報告された。谷口実・環境安全本部副本部長は「里山再生は企業の姿勢をアピールする絶好のチャンス。専門家や行政の助言をもらい、長く携わりたい」と話す。
 キリンビール(本社・東京)も工場付近の計11カ所で、「水源の森づくり」と銘打った植林活動を進める。「おいしいビールにはきれいな水が必要」との理念の下、99年から森林育成に向けた取り組みを始めた。同社滋賀工場(滋賀県多賀町)では、04年に約1.2ヘクタールに約500本の木を植え、社員約100人が毎年、下草刈りを続ける。さらに、近くを流れる犬上川や琵琶湖の水質を守るため、上流の森林(約820ヘクタール)を所有する山林組合に資金援助。05年から10年間で約3千万円の支援金を出す予定だ。
 電子部品大手の村田製作所(本社・京都府)は今年7月、京都府亀岡市の山林48ヘクタールを整備する協定を所有者と結んだ。広報担当者は「地元への貢献という面で里山再生は効果的。年間数十万円の経費でアピール度は大きい」と打ち明ける。
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 そんな企業の活動を行政側は歓迎する。財政負担が軽減されるほか、整備された森林は災害時に土砂崩れ防止などの効果をもたらすからだ。
 7割以上を森林が占める和歌山県は02年、企業が森林を整備する「企業の森」事業を全国に先駆けて制度化した。それまでは県内の人工林約21万ヘクタールのうち約5万ヘクタールで10年以上、間伐が実施されておらず、森林管理は県政の重い課題だった。
 企業は森林所有者と無償で5~20年間の賃貸契約を結び、植林や間伐などの管理を担う。松下電工(本社・大阪府門真市)や東洋紡(同・大阪市)など県外の企業も参加。31団体が計約142ヘクタールの再生に取り組む。高知県も05年度から同様の制度を進めている。
 大阪府は05年度、企業と森林所有者が森林管理の契約を結ぶ「アドプトフォレスト」事業を始めた。他県との違いは、トラブルが発生した際に行政が処理にあたる仕組み。所有者から「途中で企業が投げ出すのでは」との意見が出たため、協定締結に府と地元市町村が加わり、管理できなくなった場合は自治体が引き継ぐことを約束する。
 担当者は「行政が責任を持つことで所有者や企業に安心感を与える。事業を起爆剤に、地域で森林保全の機運が高まるのを期待したい」と話す。
 京都議定書では温室効果ガスの排出量について、2012年度までに90年度と比べて6%の削減を打ち出し、森林整備で3.8%分を担うとしている。だが、間伐や下刈りなどの管理ができずに放置された森林は削減効果に計算できず、森林面積全体の25%にあたる約630万ヘクタール分が宙に浮いた状態だ。
 政府は12年度までに約330万ヘクタールの森林を整備する計画だが、後継者不足や資金難などで荒れ地が増加しつつある。林野庁は「6%は困難な状況だが、森林吸収分だけは達成したい。企業参加の里山再生は願ってもない動きだが、ブームで終わらずにいてほしい」と期待を寄せる。