ID : 4405
公開日 : 2007年 8月 5日
タイトル
森林再生、広がる芽 適切管理木材に日本版認証
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://www.asahi.com/business/topics/TKY200708060011.html
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元urltop:
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写真:
 
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きちんと管理された森林とその産出材にお墨付きを与え、消費者にわかるようにする森林認証制度の日本版の活用が進み始めた。国内の認証林面積は国際版の面積を超え、地元工務店が産出材を使った住宅建設を売り物にするようになった。低迷が続く国産材の復活につながるのでは、との期待も寄せられている。

森林認証材を天然乾燥させる新産住拓の保管場と同社の小山幸治会長=熊本県相良村の「人吉木材工業団地」で 日本版認証第1号の日本製紙社有林と、制度活用の中心人物である中尾由一さん。伐採した木材は葉をつけたまま山に置く「葉枯らし」で乾かす=静岡県富士宮市で 日本版森林認証の先進地  03年に日本版認証を得た第1号森林が富士山のふもと、静岡県富士宮市に広がる日本製紙の北山社有林だ。育ったヒノキは、静岡市の菊池建設が首都圏を中心に伝統工法で年約300棟造る「ヒノキの認証材の家」に使われている。
 この「産地直送」を提案したのが、日本製紙出身で菊池建設の社長になった中尾由一さん(74)=現顧問。日本製紙時代の森林管理や木材営業の経験から森林保全と住宅づくりを日本版認証制度で結ぼうと考え、菊池建設は05年、工務店で初めて同制度による加工・流通業者の認定を取った。
 山主の日本製紙の認証取得は当初、CSR(企業の社会的責任)のつもりだったので、木材は値の不安定な丸太市場に出すだけだった。この産直開始で収入も安定し、木材に産地が明示されることで企業イメージの向上も図れるようになった。
 菊池建設も市場で買うより安く木材を調達できるうえ、材質にかかわる乾燥方法や切断寸法をあらかじめ直接注文できる。首都圏の住宅展示場で産地に興味をもった客を森林見学に招くと、「この森の木で建てたい」と契約に至るケースも増え、営業の「武器」になり始めている。

●国有・県有林も参加
 中尾さんの考え方を採り入れた動きが各地に広がる。熊本県の球磨川流域では年間180棟を造る県内の住宅大手・新産住拓(熊本市)が今秋から、地元認証林産のスギを全面使用し始める。
 流域の日本製紙などの認証林の木材を買って製材。その後、球磨郡相良村の保管場で天然乾燥させることで虫やカビに強くし、香りやつやも良くして使う。化学物質の使用量を抑えてきた創業者の小山幸治会長(72)が、旧知の中尾さんが提唱する「森林保全との調和」に共鳴したからだ。
 今春から国有・県有林の認証材も確保し始めている。林野庁の九州森林管理局がこの地域で、国有林初の日本版認証をとり、県有林も同調したからだ。国と県は、荒れた私有林を減らすよう啓発するだけでなく、認証材の販路拡大も狙う。
 球磨郡あさぎり町には岡山県の集成材大手、銘建工業が07年度中に地元業者などと共同で製材工場を設け、将来は年間10万立方メートルのスギ原木を調達して住宅用板材などに加工する計画だ。この地域の認証材供給が増えれば、いずれ認証マーク付きの板材を売る、と林野庁関係者はみている。
 広島県廿日市市や栃木県鹿沼市、北海道紋別市などでも日本版認証を活用するための山主と地元業者のグループが生まれている。国産材利用を掲げる工務店約60社による団体「地球の会」も各地の山主に森林認証を働きかける。「工務店と山主が森林認証を通じて話し合えるようになった。この産直が広がれば木材の流通革命が起きる」と中尾さんは語る。

●輸入剤値上げも追い風
 林野庁によると、国産材価格は80年をピークに低下してきた。円高で安く入ってきた輸入材に押され、指標のスギの中丸太は80年の3万8700円(1立方メートルあたり)が98年に2万円を割り、05年には1万2400円まで落ちた。山主は木を売っても植林・間伐費をまかなえず、荒れた林が増えて、土砂崩れなど防災上の問題も生んでいる。
 ただ最近、輸入材が値上がり傾向だ。住宅の柱向け集成材の欧州産ホワイトウッドがユーロ高などで昨年より4割上昇。ロシアは合板用丸太の輸出関税を今夏から段階的に引き上げ、09年に税率を80%にする方針だ。
 輸入材価格の上昇に伴って、国内の集成材・合板業者が原料を国産材に切り替え始めた。林業地帯への新たな工場立地が目立ち始めた背景にはこうした事情もある。
 地球温暖化対策として森林保全に光が当たることも追い風の一つだ。
 消費者が国産材志向を強めれば、日本の林業復活と森林再生にもつながる。日本版森林認証の広がりは、それを後押しする可能性を秘める。

〈森林認証制度〉適切に管理された森林を第三者機関が認める制度で、産出材を分別管理できる流通加工業者も認定。木材のほか家具、紙などの製品にマークをつけて消費者にアピールできる。国際版は、熱帯林の違法伐採防止などを目的に環境保護団体を中心に93年設立された森林管理協議会(本部ドイツ、FSC=Forest Stewardship Councilが草分けで、認証林面積は世界77カ国で約9000万ヘクタール。日本の森林は00年から認証を受け始め、24カ所に計約27万6000ヘクタール。
 日本版は、国内の林業や木材の流通加工業者などによる「緑の循環」認証会議(SGEC(エスジェック)=Sustainable Green Ecosystem Councilによって03年にスタート。その認証面積は国内4大「山持ち会社」の王子製紙、日本製紙、三井物産、住友林業の参加で06年に国際版を抜き、44件計39万7000ヘクタール。流通加工業者認定は77件。認証を得るのに英訳作業が不要で費用が安く、管理計画の有無など7基準を満たせばいいので、認証を取得しやすいとされる。