ID : 4407
公開日 : 2007年 8月 5日
タイトル
『緑のオーナー制度』元本割れ続出 リスクの説明不十分
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新聞名
中日新聞
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元URL.
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2007080602038964.html
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元urltop:
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写真:
 
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 国有林育成のために市民が出資し、伐採林の販売収益を受け取る林野庁の「分収育林(緑のオーナー)制度」で、収益が出資金を下回るケースが続出している問題をめぐり、出資者から「国を信用して契約したのに…」と不満の声が上がっている。収益は国産材の市場価格に左右されるため、制度は元本保証ではない。しかし、国が十分にリスクの説明をしていない可能性が高く、国に賠償責任を求める動きも出ている。 (重村敦)
 浜松市の女性(65)は一九八六年、静岡県三ケ日町と引佐町(どちらも現浜松市)のスギとヒノキの林を三口契約。負担金は一口五十万円で、計百五十万円を支払った。二〇一三年と一四年に迎える満期には、木が伐採され、一般競争入札で販売される予定だ。一口が家一軒分の木材に相当するという。
 女性はオーナー募集のとき、営林署員から「(販売額は)応募したときとほぼ同じ金額になるだろう」と言われた。ところが、最近、管轄の関東森林管理局に問い合わせたところ、ある区画の販売収益が一口約二十六万円と、負担金の半分しかなかった。その後、落札されなかったケースがあることも知った。
 女性は、支払った金額程度は戻ると思っていただけに、「自分のときに売れるかどうか分からず、売れても少ししかお金が戻らないかもしれない。国は対策を取ってほしい」と話す。
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 分収育林は一九八四年に始まり、九九年から満期を迎え始めたが、二〇〇〇年度以降は、販売収益が負担金より少ないケースが相次いでいる。昨年度の販売実績では、落札された百六十カ所のうち、収益が負担金を上回ったのは四カ所だけ。全体の98%が元本割れだった。収益は、一口二十万円から三十万円台が多く、岐阜県中津川市の森林は十五万八千円と、負担金五十万円の三割程度しかなかった。
 また、予定価格に達せず、落札されなかった森林が七十五カ所あった。これらは、再度の入札をするか随意契約で売却する。
 落札額の低迷は、輸入木材の増加に押され、国産木材の価格が下落を続けているためだ。日本不動産研究所によると、昨年三月末の立ち木価格(一立方メートル当たり)はスギが三千三百三十二円で、制度開始時の五分の一にまで下落。ヒノキも三分の一に落ち込んでいる。
 北京五輪に伴う需要増で外国産の木材価格が上がるなど好材料も出ているが、比較して高い国産材は、大幅な値上がりは期待しにくい。オーナーは延べ八万六千人に上り、今後も元本割れは多発しそうだ。林野庁国有林野管理室は「苦情も寄せられており、心苦しいが、制度上、損失分を補てんすることはできない」と話すだけだ。
 こうした中、国の責任を問う動きも出ている。損失が出たオーナーから相談を受けた針谷紘一弁護士(大阪)は「国として価格下落が予見できなかったからといって、損失を我慢しなさい、というのは問題だ」と指摘、国家賠償請求を検討しているという。
 一方、投資ではなく、森林育成への貢献を強調する声もある。分収育林と並ぶ制度で、樹木を自分たちで育て、販売収益を得る「分収造林」に参加している「森林クラブ」の外川隆代表は「収益は気にせず、森づくりを楽しんでいる。自分のお金で森林が保全されることにやりがいを感じる人もいるのでは。こうした制度は、都市から山にお金が流れ、林業への関心を広める意義があると思う」と話す。
  分収育林制度  生育中の国有林について、市民がオーナーになって整備や管理の費用を負担し、十五-三十年後に伐採、販売、持ち分に応じて収益(間伐分も含む)を国と分け合う制度。負担金は一口五十万円か二十五万円。スギやヒノキなどが対象で、国が林業者らに委託して枝打ちや間伐をする。国は国有林を、これまでの木材生産から土砂災害防止や二酸化炭素吸収といった公益的機能を重視する方針に転換。九九年度以降、募集を休止している。