ID : 4469
公開日 : 2007年 8月19日
タイトル
農の大切さを伝えたい
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/tabi/domestic/inaka/20070817tb03.htm?from=yoltop
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元urltop:
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写真:
 
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小田原から箱根を経て伊豆スカイラインを南下、背後に富士山、右手眼下に沼津の町並み、左手に相模湾を眺めながら進む。エアコンを切り、窓を全開にして風を感じながらのドライブが気持ちよい。30分ほど走るとスカイラインは標高を下げて、民家が点在する集落へと降りた。
 冷川料金所を出た辺りが静岡県伊豆市の「徳永」と呼ばれる地域である。伊東と修善寺のほぼ中間にあたる徳永は、周囲に浄連の滝と並ぶ伊豆の名瀑(ばく)・万城の滝があり、きれいな水がわくところだけに、ワサビの栽培が盛んだ。集落には田と畑が整備され、それを豊かな森が囲む。「田舎暮らし」に理想的な里山風景が広がっていた。渡辺泰夫さんが徳永に移り住んだのは6年前、59歳の夏のことだった。
森を生き返らせる
「森林づくり伊豆の会」のメンバーたちが森を整備する 「のどかな里山風景に見えるでしょう。でも、壊れかけている場所もあります。森に出かけてみましょう」と、渡辺さんが言った。渡辺さんが軽トラックを止めたのは、万城の滝の駐車場だった。滝を眺めるために観光客が坂道を下りていく。その人たちに渡辺さんが笑顔で声をかけた。
 「滝を見たあとに、上の森の遊歩道も散策してみてください」
 上の森は植林地である。人工林である植林地は、杉やヒノキなどの苗を人の手で植え、下草刈りや枝下ろしなどを定期的に行い、長い歳月をかけて育てて木材として出荷する。しかし、海外から安い木材が輸入されるようになると、日本の林業は衰退を余儀なくされた。中伊豆も例外ではなく、ワサビ農園などに職種を変えたケースも少なくない。植林地に人の手が入らなくなると森は死んでいく。密集した常緑樹の葉が太陽の光を遮り、森は真っ暗になる。下に草は生えず、樹木そのものも弱くなる。植林の木は実を結ばないから、野鳥や野生動物はそこで生きられない。
 「死にかけた森を救うために、地元の人と一緒に“森林づくり伊豆の会”を発足しました。チェーンソーの使い方を学び、植林地を間引きして太陽の光を入れています。さらに、実のなる木を植えています」
 万城の滝の上部の森は、人の手が入らなくなって久しかったが、渡辺さんたちボランティアによって生き返り、現在では遊歩道も整備された。木々のあいだに光が差し込み、木の根元では野草が花を咲かせていた。